いつかやりたいと思っていること

 織姫さまのところに北海道から大量に送られてきたたまねぎの皮。それを使って染めたハギレで織った小さな敷物。竹でできた織り機を使って、暑い夏の日に公園でやったデモンストレーション。だれもお客が来ないから、出店側だったけれど、私にも織らせてくれた。独身の時に参加していた一坪ショップの夏祭りの出店での出来事。織姫さまはその一坪ショップに裂き織りの小物を出品していた年配の女性。屋号を「織りひめ」としていたので勝手にそのように呼んでいた。「織姫」という名前のおもちゃの機織を知っているかと聞かれた。そんなのがあるのかと興味を持ったけれど、残念ながらもう売っていないらしい。

 慣れない手つきで機織を動かしていると子供たちが寄ってきた。やりたいという子供の数が増え、にぎやかになった。織姫さまは教室を持たない主義。「機織のある家になら教えに行くよ。」と言っていたが、残念ながらわが家には機織はない。だからたった一日だけの体験教室。ダンボールを組んだものでも機織はできるよとも教えてくれたが、なかなかそれをやってみようとまでは思わなかった。

 実は叔母(母の妹)の家には大きな機織があった。裂き織り体験でその面白さにすっかり魅せられた私に、叔母は一度だけ「機織いる?」と聞いた。叔母は「織物に興味があったけれど、やってみると単調で私には向かない。洋裁のほうがずっといい。」と言った。私にはその単調と表現されたそれこそが機織の楽しさのように感じていたので、「私はそこが好き。」と返した。

 機織を譲り受けるということにはちょっと心惹かれたけれど、まだ自分の興味がどの程度のものなのか自信がなかったし、ひと部屋を占領しそうな大きさのそれは、とてもわが家には収まらないと断り、そのうち余所へもらわれていった。あの時もらっていたら、いったい今の私は何をやっていただろう?


 梨木香歩さんの本にはまりまくっている。週末から今朝にかけて、「からくりからくさ」「りかさん」と立て続けに読んだ。「からくりからくさ」の主人公の蓉子さんは草木染をする女性。おばあさんにもらった”りかさん”という市松人形を大切にしている。蓉子さんの工房は元おばあさんが住んでいた家。そこには織物をする大学生の女性二人と、鍼灸学校に通っているアメリカ人女性が下宿している。彼女達はおばあさんの庭でいろいろな植物を育て、そして時にはそれを食し、それで染めた糸を使って反物を織ったりして暮らしている。りかさんもいっしょに”暮らして”いる。

 読みながら私は、何年も前に作った裂き織りの敷物を思い出し眺める。またやってみたいなと思う。草木染も、母が楽しそうにやっているのを見ていたときは「なんてめんどくさそうなものを…」と思っていたものだが、「からくりからくさ」を読んでいくうちにこれもまた面白そうだという気分になってくる。「りかさん」の中で、切り倒された桜の枝を使ってりかさんのための反物を染める場面に至っては、もうやってみたくてたまらなくなる。桜を煮出し茶褐色ににごった液につけたちりめんが、鮮やかな赤に変化する瞬間を見たくて見たくてたまらない。

 なんか、私っていつも一歩も二歩も遅れているなぁ…。状況はすでに通り過ぎていることばかり。草木染の本も母が何冊も持ってきて、一緒にやろうと言ってくれていたのに。(母の興味もすでに別なことに移っているのだが…。)それとも、今やっと「その時」に近づいているのだろうか?

 梨木さんの本は不思議。私の中の眠っていた想いを呼び覚ましていくような感じ。

 ブックオフを2軒はしごして、彼女の本をあと4冊手に入れた。本はいつでも読んでいるけれど、こんなにどっぷりとフィクションを読み続けるのはかなり久しぶりのこと。本だけ読んでいれば幸せ、という感覚もしばらくぶり。とても楽しい。まるで新しい誰かに出会ったような気分。今は読みたい気持ちが先行しているので図書館やブックオフに駆けつけたけれど、彼女の本は装丁も美しく、私にしては珍しく手元に置いておきたくなっている。いづれ手に入るのならば、ハードカバーで手に入れたいなと思うものもちらほら。(ただし、文庫に書下ろしなどが収録されているものもあるのだが…。)


 日曜日の朝。目が覚めて、そのままベッドの中で「からくりからくさ」の通り雨の場面を読む。蒸し暑い雨続きの今の季節と同じ。昼はそうめんにしようと起き上がる。島原の手延べそうめんはしっかりしたこしと歯ごたえでとてもおいしい。たっぷりの薬味で食べた。

 夜は昼につくったそうめんのつゆに甘みを少し足し、厚揚げと三つ葉の煮含め。


 そして、小松菜ともやしとひき肉の炒め物。 こっちは塩味。ご飯を食べながら考える。梨木さんはきっとお料理も上手であろうと。しょうゆ漬けのしそで巻いたおむすびを自分も作ってみたいと思ったり。それにしても、「りかさん」の持ってきた箱膳は、佐賀のひな祭りで見たもののようでどきどきする。


 今朝も番茶をいただきながら「りかさん」を読んでいた。片づけをしようと本をテーブルに伏せたとたん、うっかりして湯飲みを倒してしまった。思わず、「りかさん、ごめん!」と謝る私。染みになるだろうか?やっぱり家事を先に済ませてから本は読むべきだな…。午前中いっぱい、いろいろな家仕事をせっせとこなす。早く続きが読みたい一心で。開いていた「りかさん」のページはうっすらお茶のグリーンに染まっていた。あぁ、やっぱりお茶でも色は染まるんだ…。

 ベランダのミニきゅうりとミニトマトを収穫しながら、洗濯には使っていない表側の物干しを、染物用にしたらどうだろうと想像してみる私です。


<本日の本>
からくりからくさ
りかさん

コメント

akemi さんの投稿…
私の母、去年から機織りを始めたんですよ。
以前は草木染等もしていましたが、昨年、教える人と出会え、そのご縁で機織りを楽しんでいます。
なかなか素敵な物が仕上がるんですよね。性格も出るみたいで、作った人により、柔らかだったりしっかりだったり!
私には向かないかな?
Sanae さんの投稿…
★Akemiさん、
わぁ!お母様、機織りをされているんですか~。いいなぁ!私も少し調べてみました。まずは家でできる草木染の本でも買ってみようかなと思います。ハーブでもできるそうなのでちょっと楽しみ♪

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