ラプサン・スーチョンという紅茶

 昨日、暑い日でもあえて温かい飲み物を飲む・・・ということについて書きましたが、その中で最近午後によく飲んでいるイギリスで買ってきた面白い味わいの紅茶があります。その名もラプサン・スーチョンという紅茶。

 ラプサン・スーチョン(Lapsang Souchong)に興味を持ったきっかけは、出口保夫さんのイギリスに関するエッセイです。アフタヌーンティーの時の紅茶のひとつとして紹介されていました。中国茶ベースの紅茶で独特の香りがあります。

 中国茶ベースの紅茶と聞いてすぐに思い出すのは、トワイニングスのプリンス・オブ・ウェールズ。これは聞くところによると好き嫌いの分かれる紅茶のようですが、私はこの紅茶がとても好きです。すっきりとしていて飲みやすい、中国茶らしい味わいの紅茶だと思っています。

 プリンス・オブ・ウェールズやキーマンティーなどにも苦手意識はなく、時折好んで飲んでいたので、イギリスに行ったらぜひともこのラプサン・スーチョンも試してみたいと思っていました。そして、どこぞのホテルなどに特別アフタヌーンティーなどをしに行かずとも、その紅茶はけっこういろいろなところに売っており、いつでも買うことが出来るものだと分かりました。

 そこでいくつかのお店で見比べてみて、Whittardのラプサン・スーチョンを買うことにしました。以前Whittardの中国茶ベースのものを友人からいただいたことがあり、それはラプサン・スーチョンだったのかそうでないのか今となってはわかりませんが、とても美味しかったという記憶があったのです。

 Whittardはイギリス国内にたくさん支店を持っている紅茶や珈琲の専門店で、滞在していた街のショッピングモールにもお店があり、気軽に買いに行くことができました。スーパーマーケットの紅茶よりは少し値段はいいのですが、その中でも家庭用の簡単なパッケージのものを買いました。50個入りのティーバッグで、たしか£5しなかったと思いますが、値段は忘れてしまいました。

 ラプサン・スーチョンは強烈な香りを持つお茶です。お茶自体の味わいはアッサムなどのミルクティ向きのものに比べればいくぶん軽く、ストレートで飲んで美味しいお茶だと思いますが、タンニンはしっかりとしているのか喉ごしのサッパリ感をとくに感じます。以前、吹き替えの仕事をしている友人が「仕事の前にはウーロン茶は飲まない。喉の油分を取りすぎてしまうから。」というようなことを言っていたのを思い出しますが、この紅茶もそういう感じに近い気がします。というわけで、中国茶だから当たり前のような気もしますが、中華料理のこってりとしたものを食べた後などにも良さそうです。

 そしてラプサン・スーチョンの特徴である強烈な香りの原因は、その製法にあります。ラプサン・スーチョンという紅茶はスモークされた紅茶で、燻製にはパインウッド(松)が使われています。香りはかなり強烈なのですが、それでもなんだか懐かしい感じ。香の立ち込めたお寺を思い出させる香り・・・とでも言いましょうか。この暑いさなかにこの香りを嗅ぐと、お彼岸やお盆の風景が思い浮かんでしまいます(笑)。

 自然と心穏やかな気持ちになり、シーンと静まり返って、蝉の声だけが聞こえる遠い夏の日の情景が浮かんでくるような香りです。肌にまとわりつくような湿度やみずみずしい水田の様子が脳裏に浮かびあがります。それはまさにアジアの風景!おそらく白檀の香りなどを好む方なら、きっとこのラプサン・スーチョンを気に入るのではないでしょうか。

 しかしいったいこんなお寺臭い香りのお茶を、イギリス人たちはどのような感覚で飲んでいるのだろう?と考えずにはいられません。なんとも不思議なことです。このお茶を飲んで私が思い浮かべる光景は、そういう原体験を持っているからこそのものだと思いますが、ならばイギリスの人々の心に浮かぶのは、いったいどのような情景なのでしょう?とても気になります。いつかこのお茶を好きだというイギリス人に出会ったら、ぜひともそこのところを尋ねてみたいものです。

 ま、そんなことはさておいて、私はこのお茶がとても気に入ってしまいました。ティーバッグはまだまだたっぷりとあります。このお茶のために、鉄瓶でもひとつ買いたいな・・・などと思っているところです。

 (出口保夫さんのエッセイは繰り返しも多いけれど、どれを読んでもイギリスへの愛情が感じられて、とても面白いです。)



 

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