紙という素材を介して『読む時間』(アンドレ・ケルテス写真集)


昨夜、今年の芥川賞と直木賞が決まったというニュースをテレビで見ましたが、現在そういう小説はどのくらいの割合が電子書籍化されているものなのでしょうか?ほとんど100%に近いものなのか、はたまた、実はまだまだ従来の書籍形態のものが一般的なのか・・・?未だにスマホもタブレット端末も使用していない私にはちょっと想像がつきません。

とはいうものの、「何か文章を読む」ということだけを考えれば、毎日こうして自分もパソコンに向かって文章を書き、それを誰かにパソコンなりスマートフォンなりタブレット端末なりを介して読んで頂いているわけですし、他の方々の書いたものも、毎日一定量を同じようにパソコンを通して読んでいます。

さて前置きが長くなりましたが、昨日わが家のポストに届けられたのは、『読む時間』(原題:On Reading)と題された1冊の写真集です。「20世紀を代表する」と形容される写真家のひとりであるアンドレ・ケルテスhttps://www.facebook.com/andrekerteszの作品集で、2013年の11月に創元社さんhttp://www.sogensha.co.jp/から新装・日本版が出版されたもの。詩人の谷川俊太郎さんの序文が添えられています。創元社さんに直接注文し、郵送していただきました。

ちょっと面白いそのタイトルからも想像される通り、写真集1冊まるまる読書する人々の姿が収められています。ハードカバー、ペーパーバッグ、新聞、雑誌、聖書(たぶん)・・・などなど。紙を素材としてできているあらゆる媒体に書かれた文章を、人々はおもいおもいの場所で、自由な格好で、読みふけっているのです。

壁一面に本棚のある部屋。明るい光の差し込む窓辺。ぽかぽかとした陽気の公園。時には屋根の上でも。(時には・・・というにはけっこうな数の人々が、この屋根の上での読書を大変気に入っているみたいです。とても気持ちが良さそう。)


”ご自由にお持ちください”と書かれた新聞紙の束を思うままに崩して、その上に乗っかって夢中で連載漫画を読む少年もいれば、礼儀正しくつつましい姿で、列車の座席で本を開く日本人の姿も見られます。日本で撮られた写真は4枚ありました。ほかにはパリ、ニューヨーク、ヴェネツィアなどなど。裕福な人も、貧しい暮らしをしている人も、それぞれの環境の中で「読むこと」を楽しんでいる姿が写しだされています。

アンドレ・ケルテスの見たたくさんの読書風景を、まだ現在の私たちもリアルな共感を持って眺めることができますが、では、100年後にはどうなんだろう?と考えずにはおれません。すべての本が電子化される日がくるとは、今はまだすぐ目の前の出来事と考えられずにいるけれど、アンドレ・ケルテスがこれらの写真撮影に使用したフィルムという素材は、今や大半の人々に忘れ去られようとしています。源氏物語の巻物を博物館で見るように、糸でたくさんのページが綴じられた本たちを、珍しいものを見るように眺める時代も来るのでしょうか?

万が一、100年経たないうちにそんな時代がやってきたら・・・今もう一度フィルムで写真を撮りたいと時代を遡ろうとしているような私のような人間は、その時がきたらパソコンを使ったブログなんて止めてしまって、(いや、止めないかもしれないけれど、)せっせと紙を使った何かを作ろうとしたりするのかもしれません。そしてきっと、そういう似た者アマノジャクが、世の中にはたくさんいることでしょう。

だって、読書の楽しみは文字を追うことだけなんかじゃない。手にした時の重さの感覚、紙の手触り、インクの色、匂い・・・そういうことまでも含まれている。そんなことを、あらためて思い出させてくれる写真集です。


コメント

アン さんの投稿…
Sanaeちゃん、こんばんは~☆
そうなんですよね。読書には、ただ活字を追うだけじゃない
楽しみがあるんです。
婿が煙草を止めて1年以上になるらしいのですが、
煙草の代わりに文庫本を買ってひたすら読書の日々を
送っているんですって。
娘は病院の待ち時間、塾の待ち時間に読むのに丁度良いと、
1冊持って出かけている内、すっかりハマってしまった!
と笑っていました。
スマホやタブレット端末も、待ち時間に読めるけど、何か
違うんですよね。
Sana さんの投稿…
★アンさん、こんにちは。
タバコの代わりに文庫本ですか~
タバコも400円超えたので、文庫本1冊買えちゃいますものね。
(古本ならもっと安いし・・・)

本屋さんで本を選ぶ楽しみというのもあったり・・・

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