ツバメとシルバー人材派遣

玄関の吹き抜けのツバメの巣と、カラス避け
 
わが家には猫のなつこの他に大事な同居人がいる。同居鳥と言った方が正しい。家を購入したその年の5月に、すかさずツバメが巣を作った。玄関の吹き抜けの上だ。2012年のGWに福岡へ里帰りをし、帰ってきたら玄関の前が鳥のフンだらけになっていて驚いた。出かける前にはなかったツバメの巣が、いつの間にかできていた。なつこがわが家の庭先に登場したのはその年の6月なので、ツバメの方が先住ということになる。
 
つがいのツバメはそれから毎年2回ずつ、わが家の玄関先で産卵し子育てをする。だいたい3月の終わり頃に巣を補修し始め、7月に2度目の子育てをするから、4ヶ月くらいはひんぱんに鳥のフンをそうじする。もっとも、フンが落ちるのは雛が卵からかえってからだ。大変ではあるけれど、かわいい姿を見られるのは個人的にはとても嬉しい。
 
雛が卵からかえる頃になると、賑やかなさえずりが聞こえ始め、餌を運ぶ親鳥の出入りも頻繁になり、そしてカラスが感づく。カラスは雛をえさとして狙う。わが家のツバメの巣は表からはまったく見えない位置にあるのだけれど、カラスは低空飛行から吹き抜けの中に突入し、巣を一撃して雛を落とそうとするのだ。2年目に一羽それで落下して死んでしまった。近所の人が道の向こう側から目撃していたそうで、あとですごい迫力だったと教えてくれた。私も家の中から気づいて内側から玄関のドアをドンッと叩いた。おそらくそのせいでカラスは逃げ出し、墜落した雛は餌にもならず、結局無駄死にをさせてしまった格好だ・・・。どちらがよかったのかと悲しくなった。雛は庭にそっと埋葬した。
 
今年の5月の終わりにも、カラスの姿を吹き抜けの窓から見た。なつこが激しく鳴いたので気がついた。私は今度も思わずドアを叩いてしまったが、その後すぐにこわごわドアを開けた。雛は落ちていない。しかし・・・上を見上げると雛は固まって動かない。5羽とも全部死んでしまったのだろうか?巣の中で死んでしまったら、いったいどうしたらいいんだろう・・・。絶望的な気持ちになった。さえずりも聞こえなくなり、親鳥も遠くの電線の上でじっとしている。たのみの綱のもーりーは海外出張でしばらくは戻らない。一人で心細くなった。ふと思いつき、以前ツバメの巣の調査アンケートに参加した日本野鳥の会に電話をしてみる。女性が対応してくれた。一部始終を話しながら涙がこぼれ、こらえきれなくなり号泣してしまった・・・。ツバメの雛が全部死んでしまった・・・。
 
野鳥の会の方はとても優しく、それが野生の営みだから・・・と言ってくださった。カラスも餌を食べて生きているのだと。そして、巣の始末は親鳥がするはずだけれども、もし数日しても変化がなかったら、街の便利屋さんに相談するとよいと教えてくれた。話を聞いてもらって、気持ちはだいぶ楽になった。相談する場所のあるありがたさを思い、お礼を言って電話を切った。
 
・・・すると、とたんに聞きなれたさえずりが遠くかすかに聞こえた気がした。え?あれれ・・・??ひょっとして、今、ツバメ鳴いた???
 
慌てて玄関へ出て上を見上げると、5羽全部が再び賑やかにさえずり始めていた。親鳥も近くを旋回している。生きてた!雛は身を硬くして、じっと危険が通り過ぎるのを耐えていたんだ!!私は慌ててもう一度、日本野鳥の会に電話をし、無事生きていたことを伝えてお礼を言った。話を聞いてくださった女性の方は私と一緒になって「あ~!よかった~!」と喜んでくださり、もし頻繁に狙われるようならカラス避けをつける方法もある・・・と教えてくれた。ネットに参考例が出ていますとのことだった。私はさっそく方法を調べた。しかし、自分で設置はできそうもない。もーりーの帰宅を待っていれば、またいつカラスが来るか分からない。悩んだ。そして、市のシルバー人材派遣センターに相談をした。
 
翌日、父と同年代(70歳代)の男性が軽トラックで来てくれた。大工さんですか?と尋ねると、「いやぁ、大工さんは数時間で終わっちゃうような仕事は引き受けねぇよ。俺なんかは、何でも屋だな。」と笑っておっしゃった。道具や材料も見繕って来てくれた様だった。そして、「ツバメの巣を撤去してくれってのはよくあるけど、保護したいってのは奥さんのところが初めてだなぁ!」とおっしゃいつつも、快く引き受けてくれ、私の差し出した材料でうまく工夫してカラス除けを作ってくれた。日差しの強い暑い日で、フンだらけの玄関ドアの上に設置するので大変な作業だったと思う。私もはしごを支えたり、道具を手渡したりと手伝った。
 
「ご主人のせっかく建てた家に釘なんか打って怒らんねぇかな。いや~、やっぱり釘はやめとこう。いつでもすぐに外せるように、ネジにしとうこうな。」
 
大丈夫です、大丈夫です、と言っても、こんな風に大変気を使ってくださった。作業後に請求書を書きながらも、「愛鳥週間ってなことで、本当はこういうのはタダでやんなきゃならねぇかもしれねぇなぁ。しかし、リサイクル品で作ることができたから、材料を買いに行く手間が省けて助かったよ。」と笑っておっしゃった。もちろんちゃんとお代はお支払いした。3時間の作業で税込み4千円ほど。すぐに来てくださり、本当にありがたかった。
 
ツバメはそれからまもなく巣立っていった。シルバー人材で来てくださった男性は、「ツバメ、大丈夫だったかい?」と、翌日も電話をかけてきてくれた。親鳥がちゃんと巣にアクセスできたか気にかけてくれたのだ。カラス避けは、ホバリングのできないカラスは入れず、ツバメ達だけが出入りできるという絶妙な位置に設置された。ツバメは巣立つ前の日の夕方、庭の水遣りをしていた私の顔の目の前に来て、チチチ・・・とさえずりながらホバリングした。なんだか、ツバメに話しかけられたみたいな、不思議な気分だ。
 
また次の春もツバメは来るだろうかと内心心配していたが、来年と言わず、すぐさま親ツバメは戻ってきて私を喜ばせた。しかし、デリケートなツバメの親鳥は、カラス避けのために今までの巣はすこし使いづらくなってしまったようで、今年の2度目の子育て用には新しい巣を作った。巣に入るための飛行角度を変えざるを得なかったのかもしれない。申し訳ないことをしたと思いつつも、こればかりはツバメの意見を聞いて作ってあげられなかったので仕方がない。新しい巣をもう一度作るツバメはたくましい。
 
そんなわけで、わが家には新旧2つのツバメの巣がある。わが家は意外と大家族なのだ。
 
 
 

コメント

アン さんの投稿…
Sanaeちゃん、こんばんは~☆
とっても素敵なお話を有り難うございます。

カラスの所ではドキドキ!いえ、捕まりはしないか
じゃなくて、Sanaeちゃんがカラスを追い払う時、
顔を見せやしないか・・・です。カラスって利口な
鳥なので一度追われると、その人の顔を記憶していて、
襲撃するらしいです。ドアをドンドンなら誰か分から
ないから良かった~!
ホバリングしながらチチチは、きっとお礼を言って
いたんですね。

雛が5羽もいたら、落し物も半端じゃなかったでしょ?
スズ1羽だけでも大変だったもの・・・。
ポージィ さんのコメント…
こんばんは、お久し振りです。
とても良いお話に胸がジーンとしました。
新築のお家でもツバメの巣をいとわず、温かく見守り
カラス避けも付けてあげるSANAEさんの優しさが嬉しいです。
野鳥センターの女性もシルバーセンターのおじさんも
良い方でしたね。
その一方で、ツバメの巣を取ってくれという依頼が
そんなに多いのかと悲しくもなりました。
親切なシルバーセンターの便利屋のおじさんは、
そういう依頼を受けたとき、どんなにか辛いでしょうね。
昔はツバメが巣をかけてくれたら幸運とすら感じたのに、
残念な時代になりました。
Sana さんの投稿…
★アンさん、こんばんは~
お読みいただきありがとうございます。
カラスは頭が良いと聞きますよね。
玄関の内側から姿を見かけただけで、
表にいる時は近くにいる様子もないです。
それもまた不思議。
今もまだ2度目の子育て中なので、
1日おきくらいにお掃除しています(笑)。
Sana さんの投稿…
★ポージィさん、こんばんは。
お読みいただきありがとうございます。
ツバメの巣、外してほしいというリクエストは
やはり集合住宅などで多いようですね。
個人の家だと比較的少ないのではないかと思います。
掃除を誰がするのか・・・ということも
揉め事のひとつになりかねないですもんね^^;
あとは、ベランダにお洗濯と一緒・・・とかはちょっと困るかも。

わが家は玄関なのですが、やっぱり宅配の方や
郵便局の方には少々申し訳ないです^^;
一応、インターホンのところにツバメがいると目印をつけてます。
頭の上を気をつけてくださいという意味で。
tane さんの投稿…
雛って、親がいないときはジッと静かにしているんですよね。 
雛達が無事でよかった。 どうなるのかとヒヤヒヤしました。 人が巣の下にいるときに、フンを落とすかしら。
すごい度胸、だったりして。 
カラスよけがあるのがツバメ界で広まって、来年からは巣が増えたり! 楽しみですねー。 
Sana さんの投稿…
★taneさん、おはようございます。
お読みいただきありがとうございます。
雛が無事で本当によかったです。
フンは人が下にいるときは落とさないような気がしますが、偶然かな?
掃除をしているそばから・・・ということはないので。
でも、巣がこれ以上増えるのは・・・^^;;
かわいいですけどね~・・・
フンの落ちる場所が土ならいくらでも構わないのですけど。
(土だったら、フンも放っておける。)

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