『知的生産の技術』を読んで


情報カードの使い方例を詳しく知りたくて、梅棹忠夫さんの『知的生産の技術』(岩波新書)を読みました。


カードについては、澤田昭夫さんの『論文の書き方』(講談社学術文庫)を読み、LIFEのB6と5×3の横罫のをそれぞれ手元に用意してありました。B6のカードには京大型と書かれているのですが、これは元々は梅棹さんが自分のために開発し、印刷屋さんに特注して使っていたものが、仲間うちから外へと次第に広まって、いつしか市販品まで登場するようになったものなのだそうです。

ほかにも、初期費用は掛かりますが、自分の使いやすいものを注文してたくさん作っておくほうが、コストを抑えられて良いと考えていたようです。もちろんこの場合こだわるのは使い心地であって、特殊サイズなどで個性を出すようなことはせず、規格サイズで作り、コストを低くするというのも大切だと書かれています。

そうしておいて、カードは日常的に持ち歩き、一枚に一項目で、思いついたことを惜しみなくどんどん書いていくのだそうです。それ が発見や考えの蓄積になり、いろいろの活用の種になる…というわけです。

さらに、書いたものや手元に集まってくる資料を、のちのち活用させるための整理方法も、とても参考になりました。カード以外の資料の整理方法として、台紙やフォルダを使って垂直に収納するという、オープンファイルはぜひ真似をしたいと思いました。

情報カードの活用や整理方法のほかにも、日記の書き方、原稿についての話、本の読み方、タイプライターの話など、どれもとても面白かったです。以下、それぞれについて、簡単なメモと自分の感想を書いておきます。


日記についても、活用させるためにはどうすればよいのか?という視点で書かれています。日記を「魂の記録」ではなく、自分自身のための業務報告として位置付けており、これもまたルーズリーフやカードに書けば、後の活用に便利だということでした。なるほど。

私も日記をつけていますが、活用という面で考えたことはありませんでした。たしかに、ノートに書いたものはすべて、その場で生命を失っているかもしれないなぁと思えてきます。活用しようと思ったら、読み返して掘り起こす作業が必要かもしれません(汗)。

読書については、「読んだ」と「見た」を明確に区別していると書かれており、最後まで読んだものは「読んだ」、途中で読むのをやめたものは「見た」として、「見た」だけの本については批評は控えるようにしていたそうです。また、鉛筆で傍線を引きながら読み、読了後しばらくしてからカード書きをしていたそうです。この作業が二度読みと同じ効果になり、より理解が深まるとのこと。蔵書印についても触れられていました。

私は、本には書き込みをしたくないタイプ(教科書は別)なので、傍線を引きながら読むのは真似しませんが、読書の記録をつけたいとはずっと思っていたので、さっそく読了後の文献カード作りと、感想等を書いたカード作りはやってみることにしました。このエントリーも、そのカードを元に書いています。

また、手元に残しておきたい資料(本)には、蔵書印も押してみることにしました。購入年月日と店、読了年月日も記入します。蔵書印に使うことにしたのは、何年か前に篆刻教室に参加して、自分で彫ったイニシャルの印です。(デザインは用意された中から選んだものです。)初めて蔵書印を押しましたが、これをするだけで愛着が増すような気がします。宝物がひとつ増えた、という気分でしょうか。

原稿についての話は、文章の書き方の本はあっても、原稿の書き方に関する基本的ルールの指南書がない…という内容でした。(答えはここでは出されておりませんが。)1969年の本なので、その後どうなのだろう?というのが気になる点。原稿用紙に手書きをするのもすでに稀になっているとは思いますが、基本的ルールを知るということには興味があります。

ワープロ、パソコン登場以前の古い時代の本だというのを物語るのが、タイプライターの話です。日本語をどうにかして機械的に書きたい、文字の個性から切り離して文章を書きたい(手紙など)…という欲求からの、度重なる試行錯誤の記録です。ローマ字、カタカナ、ひらがな。

この部分を読んで思い出したのは、私も子供の頃に赤いボディのタイプライターを持っていたということです。文字はたぶんローマ字だったと思うのですが、インクリボンがついて、シフトキーのようなものもある二段構えのものでした。子供用のおもちゃでも、なかなかしっかりしたものだったのではないかと懐かしくなります。今でもあれば遊びたい。

本には、梅棹さんの打った、ひらがなのタイプライターの手紙が掲載されています。全編ひらがなの手紙は、とても優しい表情をしています。

『知的生産の技術』という本は、その堅苦しい雰囲気のタイトルからは想像しにくいほど、フレンドリーな本です。まず、漢字が必要最低限で、代わりにひらがなが多いのです。「多い」という言葉さえ、「おおい」と書かれています。ひらがなの多さは、誌面の見た目をソフトな印象にします。ひらがなタイプライターでの手紙と同じ優しさです。

40年以上のロングセラーはきっと、この優しい印象の誌面の効果もあるのではないかなぁと思いました。この優しさが、長い年月を経て人々に本を手に取らせ、そしてまた、楽に読み進めさせているのかもしれません。

とても良い本に出会えて嬉しいです。


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