読書:『薬草の博物誌-森野旧薬園と江戸の植物図譜』


本といえば、4月9日(土)に小石川植物園へ行った帰りに、いつも通りブックファースト新宿店へ寄りました。理工学書の置いてあるGフロアーに行くと、いろいろの図鑑などもあって面白いのですが、この日も素敵な1冊を見つけました。タイトルにも掲げましたが、『薬草の博物誌-森野旧薬園と江戸の植物図譜』という本です。


前半部分が、奈良県で江戸時代から続く私設薬用植物園、森野旧薬園について(1729年開園)の章。260年間門外不出だったという、『松山本草』という植物図譜の一部がカラーで収録されています。森野旧薬園を創設した森野賽郭が晩年に描いたものだそうで、日本に自生するものだけでなく外国からの植物も多く描かれているのは、幕府から薬園にいろいろな外国産植物が下賜されていたからなのだそうな。私設といっても、薬園としての役割というか価値が、しっかりと認められていたのですね。

図版は、一部とはいいつつも26点も収録されており(実際は千点もあるそうなので、やはり一部には違いないけど)、そのうち3点は植物ではない生き物です。また、鉱物も薬用として利用されていたものが標本で残っているそうで、それも写真で見ることができます。産地も書かれていて、信州、甲州、佐渡、丹波・・・などと読めます。石薬というんだそうな。

後半部分もこれまた贅沢な造りとラインナップになっておりまして、牧野富太郎の集めた江戸時代の植物図譜の類が11種類も、カラーで収録されています。植物以外の図版もありますし、もともと墨一色の図譜もありますが、ざっといくつか挙げてみましょう。

  • 李時珍『本草綱目』の中国のものと、和刻本(日本で写したもの)を並べて収録
  • 貝原益軒『大和本草』魚の絵もあり
  • 小野蘭山『花彙』16点も収録
  • 平賀源内『物類品隲』トカゲの絵もあり(ホルマリン漬け?)
  • 岩崎灌園『本草図譜』オールカラーの美しさ!表紙に使われているのはここから

などなど。いつまででも見ていられるくらいに、どの絵もうっとりするような素敵さです。それぞれの絵の脇には、生薬名やどのように用いられたのかなども書かれています。

そして最後には、うれしそうに植物をルーペで覗き込んでいる牧野富太郎さんの写真とともに「本草学から近代植物学へ」という章が置かれています。

実はこの本も、『ヨーロッパの歴史II』を履修していて興味を持ったものの一つです。欧州史とはいっても、出島から東インド会社を通じて日本の植物はたくさんヨーロッパへ渡りましたし、またヨーロッパの図鑑や植物学の知識なども、いわゆる蘭学として同時に日本へ入ってきましたから、切っても切り離せないというわけです。蘭学というと解剖学などの医学がまず思い浮かびますけど、江戸時代ごろは植物園を薬園というくらいですから、医学と植物はものすごく近い関係だったのですよね。

生薬というと、今では東洋医学というくくりで語られることが当然多いですが、出島に来る西洋人たちが日本の植物に興味津々だった時代には、西洋だってハーブガーデンが医療目的の庭だったのですから、まぁ、出発点は同じですよねぇ。

アーティチョークなども、江戸時代にはすでに入ってきていたようで、飯沼慾斎が描いています。オランダ経由でと書かれているから、出島での食料として持ってきていたんでしょうかね。昔はどうやって食べていたんだろう?とか、そんなことを想像するのも面白いです。

まさかここまで昔の日本のものを面白いと思う自分がいるとは想像しませんでしたが、正直、ものすご~く面白いです。文字も読めれば最高なんだけど、と、古文書にはまる人の気持ちが少しわかるような気がしてきました(笑)。

今日はせんねん灸さんのメルマガのコラムもシーボルトだったので、思わずにやにやしてしまいました。



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