昭和三年の『ツンベルグ日本紀行』


スウェーデンの分類学者カール・フォン・リンネのお弟子さんであり、長崎の出島に2年ばかり滞在していたというツンベルグ(ほかの日本語表記もあり)の本を読んでみようと、放送大学の本部の図書館から取り寄せて、先月末に借りてきました。異国叢書というシリーズの『ツンベルグ日本紀行』という本です。

学習センターに届いた本を見てその大きさにまず驚いたのですが、開いて中を見てみるともっとびっくり。もちろん書かれた時代が古いのは分かっていたけれど、届く本まで古いとは思ってもみませんでした。最近のものが届くのかと思ってました。

まず、漢字が今と違う~。読めるかな?と心配するとともに、ひょっとしてこれって、本当に昔に翻訳されたものなのか?と奥付を確認すると、なんと右から左の横書き表記で、昭和三年印刷・発行と書いてあるではありませんか(驚)。昭和三年って西暦何年?1928年だそうで、88年も前に刊行された本でした。しかもなぜか非売品の文字。どういうこと?

さらに序文を読むともっと面白くて(古い漢字使いでも、なんとか読むことはできました)、これがどうやら最初の日本語訳らしいのです。オリジナルはスウェーデン語の本なのですが、こちらはフランス語の訳本からの翻訳本。訳したのは仏文学者の山田珠樹という人です。

出版前に一応、スェーデン語のオリジナル版と英語での訳本も参照したらしいのですが、その結果分かったことは、日本語訳に使ったフランス語版は、オリジナルとは大きく構成を変えて編集されたものだったのだそうな。もともとは日記だったものを、フランス語に訳す時に、事柄ごとに並べ替えて編集されたらしいとのことでした。なるほど目次を見てみると、事典的に項目別に編んであるのがよくわかります。個人的には植物に関する記述にアクセスしたいわけなので、これは非常にありがたいかも。

それでそこだけ読もうかな~などと思ったのですが、さすがに訳したのが文学者だけあって、序文を読むだけでも文章的に読みやすく大変面白いので、時間の許す限り、最初から読んでみようかと考えを変えました。

そしてもうひとつ、この本には素敵なおまけがついておりました。ご興味ある方は、「続きを読む」からご覧ください。



「素敵なおまけ」とは、こちらの蔵書票です。木版ですかね~。

本を借りてすぐ学生ホールでパラパラとページをめくっていたのですが、これを見た瞬間、「なんて素敵!」と感動してしまいました。Ex=Libris だなんてラテン語まで書いてある。蔵書票そのものはいつ頃のものなのか分かりませんが、それでも昭和初期というか、おそらく戦前のものなのかな~?と。書見台が欲しくなるような重さの本ですが、タイムトラベルでもしているような気分で読んでいます。

ところが、しばらく読み進めていると、どうも1回読んだことがあるような気がしてきました。よくよく考えてみるとこれは、東洋文庫から出ている『江戸参府随行記』と同じものなのでした。タイトルが違うのは、単に訳し方が違うってだけのことみたい。それも実は、市立図書館から借りてきてあるのでありました。ははは~。

それなら口語で読めばいいじゃないかと自分でも思うのだけれども、あらためて比べて読んでみると、どうも古い訳の方が気分的にもしっくりきます。大昔の人だという気持ちがあるから、書き言葉も古めかしいほうが気分が出るってことなのでしょうかね?

本当は、東洋文庫版の方はスウェーデン語から訳してあるらしいので、そちらの方が記述も正確かもしれないのですが。でも、東洋文庫版の訳者あとがきには山田珠樹版を参考にしたと書いてありましたし、また少し読んだだけでも気づく2冊の違いもあります。

『日本紀行』の方には、ツンベルグ自身の注が( )書きで載っているのです。その( )書きの中が本当にツンベルクによる注だとすれば、その文章はちょっとお茶目な一文だったりもして、ツンベルグのユーモアや人となりが見えるような気もしました。

まぁ、東洋文庫の方は今でもオンデマンドで手に入るようなので、ともかく88年前の訳本を先に読み進めようと思います。



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