時間をかけて、百篇写して、暗記する⁈『新・数学の学び方』


本の話題を続けます。

本との出会いは芋づる式で、1冊新しいのを読めば次のものが見つかるということが少なくありません。岩波書店の『新・数学の学び方』もそういうふうに出会った1冊です。『新』と書かれているのは、もともとは8篇のエッセイが収められた旧版が1987年の刊行だそうで、それに5名の執筆者を新たに加え2015年に出た新版だからだそうです。

本の読み方は人それぞれだと思うのですが、私は手に取った本がはじめからおわりまですべてスラスラ読めて理解できた…ということは少ない、という読書をけっこう頻繁にしています。分からない部分は浮遊させておき、分かる部分だけ読む…ということをしょっちゅうします。こういう読み方をする時は、「分からないものを分かりたいから読んでみる」というスタンスの時です。

「分からないものを分かりたい」のに分からない部分は浮遊させておくなんて、それじゃ読み終わっても分からないままじゃないか、と自分でも思います(笑)。でも、たった1冊読んだだけで未知の世界のことを分かろうなんて、それはムシが良すぎると思うのです。だからいつも、「今すぐ分かるわけがない」と、思いながら手を出します。

この本も、まさにそういう本でした。

だけど、この本を読んで自分なりに分かった部分というのは、とてもいいヒントになったな~と思うのです。まず、フィールズ賞をとったような数学者の先生だって、分からないものは分からないのだということ。さらに面白いと思ったのは、分からないものは繰り返しノートに写す!と何度も書いておられることです。「読書百篇意自ら通ずで, ε-δ論法も百篇ノートに写せば必ずわかると思うのである」(小平邦彦、p17)…と。

また別の方は、本の読み方を取り上げて、数学書はすぐに読み終えられるというものではないと書いていました。「1冊読むのに1年かかっても何も不思議ではない」(河東泰之、p59)と。行きつ戻りつしながら読んで、それでもダメな時は自分の理解がそこまで達していないと考えてさらに戻る。また、ノートを作りながら読み、あとで本がなくてもノートだけで完全に分かるようにしておく…などなど。

また別の先生は、「テキストを一つきめれば、あまり意味にこだわらないでそれを丸ごと暗記せよというのが私のすすめであるが, 1冊あげるのに1年かかるかもしれない」(小松彦三郎、p124)と。ここでも、1冊読むのに1年かかるのは珍しいことではないと書かれています。暗記をすすめる理由についてももちろん書かれておりますが、その辺はどうぞご自身で読んでみてください。(暗記の後にやるべきことも書かれています。)

とまぁ、要するにこの本から私が学んだことは何かと申しますと、数学をお勉強したいのなら、分からないことがあってもくさらずに、とにかくコツコツやるってことです。

ついでにもう一つ個人的に面白いと思ったのは、小林俊行さんのエッセイ「疑問をおこして, 考え, そして考え抜く」の後半の、「抽象的な概念を学ぶ vs 例で学ぶ」という章で対称性が取り上げられていたことです。物理における対称性の話を夏に聞きに行ってきたばかりなので、数学における対称性の話をこの本でも読めたのはタイムリーで面白かったです。

得意である人々でも時間がかかるものなのですから、私には来世くらいまでかかるだろうというくらいのつもりで、よちよち楽しもうと思います。



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