公開講座受講記(10):科学史講座「ホイヘンス『光についての論考』を読む」

受講前の腹ごしらえ
おだむすび小田急エース店でランチ

2月4日(土)は上野の国立科学博物館へ、科学史講座を受講しに行きました。テーマは、17世紀のオランダ人科学者ホイヘンスの著作『光についての論考』を読む、という原著講読もの(翻訳文を使用)です。講義をしてくださったのは、科学博物館の研究員である有賀暢迪先生です。《国立科学博物館のサイトはこちらです → http://www.kahaku.go.jp/index-sp.php

昨年の放送大学の面接授業で「光で探るミクロの世界」というテーマのものを受講したので、関連で興味を持ち応募しました。めでたく抽選に当たっての受講です。受講費は無料というありがたい講座です。午前と午後の二回に分かれており、私は午後の部を希望しました。

というわけで、いつものように早めに家を出て、まずは新宿の「おだむすび」さんで腹ごしらえを。小田急の改札脇は混んでいるということを学んだので、小田急エース店へ行きました。どうせなら上野でランチ♪ な~んてことも考えたのですけど、晴れた休日の上野はさぞ混んでいるだろうな~と思い、今回はやめました。

受講記は長くなりますので、「続きを読む」でたたんでおきます。ご興味ある方だけどうぞ。




午後の部は13時半からで、15分前からの開場でした。常設展の見学と同じように一階の券売機で入場券を買って、まずは展示室方面へ。会場はスタッフ通用口みたいな扉をぬけまして、四階の大会議室なるところで行われました。光がさんさんと降り注ぐ、明るく気持ちの良い空間でした。椅子もふかふかでびっくり!いわゆる講義室とは全然違います(笑)。

事前のお知らせメールに、「会場が展示エリアとは異なりますので~」と地図も添付されていたのですが、実際は「科学史講座」と書かれた丁寧なルート案内が各所にあり、迷うことなく大会議室にたどり着けました。

あ、そうそう。この科学史講座を知ったのは、科博のメールマガジンからです。科博のメルマガはいつも冒頭のエッセイふたつが面白いので楽しみにしています。他のイベントのお知らせやボランティア募集のお知らせなども得ることができますよ。

今回の科学史講座は、2016年度のシリーズの四回目だったそうでリピーターさんが多かったです。これまでに、ガリレオ、ニュートン、デカルトの原著講読をしたそうです。「メルマガもらっていたのに前三回は気づかなかったのだったっけ?」と思いましたが、たぶん日程が放送大学の面接授業と重なっていたりして応募しなかったのかも?と。ウーム、残念!

2017年度の予定として5~7月にシリーズものを考えているとのことでしたので、その期間は面接授業の申請をせずにおこうかな?なんてことまで思ったりしている私です。とりあえず、面接授業は4月のだけ申請しようっと。(って、ますます単位はどうすんだ~?) ←ウソウソ、そんなんムリムリ。面白そうなもの沢山あるから、ちゃんと放送大学の面接授業は、来期も各月申請しますよ~!なにしろ抽選だし。

とは言うものの科博の科学史講座も、2016年度の4回シリーズの再放送版のようなものも検討中とのことなので、受講しそこなった分をチェックできればいいな~とも思っています。

欲張りですな(≧▽≦)

科学史講座の資料

さて、今回のホイヘンスに関して、いただきました資料はこんな感じです。レジュメが一部に、『光についての論考』の翻訳テキストが一部、そしてテキスト内に出てくる氷州石なるものの光の通し方に関する補足の資料が一枚。レジュメにはホイヘンスについての資料(略年譜)、読書案内リストなどが含まれていましたが、こちらは各自参照とのことで、講義は主にテキスト資料を使って行われました。

15名ほどの参加者が三つのテーブルに向かい合うように座りまして、1人ずつ順番にあてがわれたテキストを朗読する、という趣向。テキストには段落ごとにあらかじめ番号がふってあり、先生が適宜、解説をして下さいます。講義は一時間半で、その先30分は参加自由の質疑応答の時間でしたが、誰一人帰る人はおらず、いろんな質問が出て面白かったです。

例えば『光についての論考』の第1章でホイヘンスは、「光が何らかの運動であることを疑う者はないであろう」(原亮吉編、『科学の名著 ホイヘンス』、朝日出版社、1989、p203)と書いているのですが、それを踏まえて、熱については(実験や考察等)何もやっていないのか?という質問がありました。これについては先生曰く、「熱について何かやっている例は知られていない」とのこと。*

(*内燃機関で調べると火薬式エンジンなるものを考案しているみたいです。熱力学発展のきっかけみたいなことはしてるってことなのでしょうかね??)

また、第5章の「氷州石の特異な屈折について」において「エーテル**が二種類あるのでは?」と仮説していることに関して、ホイヘンスはこの論文においてエーテルが2種類あることを立証したつもりなのか?という質問もありました。先生これに答えて曰く、「そういうつもりではないと思います。ん?いや、待てよ?そういうつもりなのかな?う~ん、いい質問ですね。考えてみます。ありがとうございます」と(笑)。

(** エーテルとは、音の伝搬に空気が媒質として必要なのと同様に、光の伝搬の媒質となるものとして仮想された物質のことです。)

このような具合で、たった1時間半 +α とは思えないほど濃い内容で、とても面白かったです。しかもギチギチじゃなくて、のんび~りふわ~んとした雰囲気の中での講義でした。なんか、優雅な時間だな~と。サロン風とでもいいましょうか。授業とはまた違う雰囲気。


いつものようにノートもとりましたよ~。

ホイヘンスの『光についての論考』はフランス語で書かれたものだそうで、日本では『科学の名著』シリーズのホイヘンスの回に収められています。有賀先生曰わく、ホイヘンスの著作を日本語で読める唯一の本とのこと。その『科学の名著』と、フランス語版(原本ではなく後のリプリント版)の二冊の本も、講義の間まわってきました。当時の学術用語であったラテン語ではなく、なぜフランス語で出版したのか?などの解説もありました。

帰宅後さっそく市内の図書館2館(市立のと神奈川工科大の)と、放送大学附属図書館との蔵書検索をしてみましたが、『科学の名著』シリーズ、ほかの著名な科学者たちの回はどこもあるのに、3館ともホイヘンスのはなかったです(^_^; 『光についての論考』以外にも『賭における計算について』など、面白そうな目次だったので読んでみたいと思ったのに、残念!講義中も、ホイヘンスはさまざまな業績のわりにはあまり知られておらず地味な存在…なんて話もあったのですが、図らずもそれを実感してしまいました(^◇^;)

本当に読みたきゃ、市立図書館に他館からの取り寄せ申請をするか、あるいはどこかに通って読むか、ですね。(古本は高価でした。)

ちなみにこの『光についての論考』が書かれたのは1690年なのですが、序文で本人も書いているように、そのはるか12年も前に、フランスの王立科学アカデミーで口頭で発表された内容なのだそうです。ラテン語に直してから出版しよ~と思っていたんだけど延び延びになってしまって、このまま面倒になってやらないままだとよくないので、とりあえずフランス語のまま出します~ってなことが書かれています(笑)。いろんな成果のある人ってことはやはり、好奇心旺盛で次から次へと興味の対象が移っていったってことなのでしょうかね?性格っぽいものも垣間見られて面白いなと思いました。

さらに、先生の用意してくださった略年譜を見ると、出版の2年前にニュートンにも会っているようです。もしかしたらニュートンとも光の話をしたんじゃないでしょうか?それでとりあえず早く出版しとこうと思ったのかも?!な~んて、想像を膨らませるのも楽しいです。ニュートンの『光学』が出るのは、ホイヘンスの『光についての論考』の14年も後ですし、内容も、ホイヘンスは光の波動説(と今言われているもの)、ニュートンは光の粒子説と、それぞれ異なる見解だったわけですが。

「先生、結局のところ光は波なんですか?粒子なんですか?」なんて質問も出まして、先生も「それは究極の質問ですね~」と笑っておられました。ここから先は量子の世界のお話になってしまうのですよね。

ところで、ホイヘンスの日記でもあれば面白そうだな~と、この講義を受けていて思いました。講義中に有賀先生の口から、「ホイヘンスはデカルトにも1回あっているはずです」とか、「ホイヘンスはロンドンでボイルの実験を見ているはずです」などという言葉が飛び出しました。個人的にちょうど最近、『だれが原子をみたか』(江沢洋、岩波現代文庫)でボイルの真空の実験について再現も含め詳しく読んだばかりだったので、ホイヘンスもあの実験を見たのか~などと、頭の中だけ17世紀のロンドンに飛ばしてみたりして、空想を楽しんでいたのでありました(笑)。

歴史っぽい視点からお話を聞くと、こういう部分が面白いのですよね。


ちなみに有賀先生はホイヘンスのことを、この時代(17世紀)の科学者のベスト3くらいにすごい人!とおっしゃっていました。最後の質疑応答の際に「なぜホイヘンスはあまり知られていないのか?」との問いには、二つの要素をあげてお応えになっていました。

曰わく、ひとつは「なぜホイヘンスはあまり研究されていないのか?」という視点から、ニュートンやデカルトに比べてホイヘンスの書くものはアッサリしていて、哲学的・思想的ではないので、研究者にとって面白みに欠けるのではないか?とのこと。

もうひとつ、「一般にあまり知られていないのはなぜか?」という視点からは、ホイヘンスがオランダ人だからではないか?と。オランダ語を操る人は今や非常に少ないのが現実で、実際ホイヘンスの伝記がオランダ語から英語に訳されたのもつい最近のことなのだそうです。「本当につい最近」と強調されておりました。(なんていうタイトルのものか聞けばよかったな~。どうもうまく探せないので…。)


私は質疑応答の時に三つの質問をしました。(多かったかな…(^^;))

ひとつは『光についての論考』に描かれていた図を見ての質問で、図には波の干渉にそっくりのものが描かれているのに、ホイヘンスはそのことには言及していないのか?という質問。ホイヘンスは干渉については何も書いておらず、回折現象についても説明していないとのことでした。

もうひとつは、フランス語で『光についての論考』を出版したときの反響はいかほどだったのか?という質問。王立科学アカデミーでの発表なので、もちろん反響はそれなりにあっただろう、との回答。さらに、「その問はそのまま科学史の研究テーマになり得ます」とのお応えも。なるほど、そういう風に研究テーマってみつけていくものなのですね~。

最後は、氷州石の謎についてホイヘンスが著作の中でギブアップを表明している現象は、後の時代に誰が解明したのか?という質問。氷州というのはアイスランドのことだそうで、Iceland Spar というキーワードで検索するとどんなものか見られるそうです。方解石(calcite)の一種だそうで、これを通して例えば文字などを見ると、二重に見えるのだそうな。ホイヘンスの『光についての論考』は、この氷州石の「複屈折」がなぜ起こるのか?がメインテーマなんだそうです。

で、この氷州石を二つ通過させたものは、二重には見えないのだそうで、その部分がホイヘンスがギブアップした謎なのです。これは今でいうと「偏光」の原理だそうで、19世紀に偏光について理解が進んだことが、イコール氷州石の謎への答えにもなる…ということのようです。

ちなみに、有賀先生がお手元の現代の物理学辞典で「複屈折」を引いてみたら、ホイヘンスの楕円を使っての解説がそのまんま書かれていたそうです。楕円を描きつらねた時にそれらの接線を決めるのはものすごく難しい問題だそうで、ホイヘンスが当時の数学者としても第一級だと分かるとおっしゃっていました。

そういえば、ホイヘンスの名前が自分の中で印象づけられたのは、理科大の数学体験館でしたもんね。サイクロイドの模型実験のところで。(数学体験館には、昨年夏の放送大学の面接授業で訪れました。)

数学に数式がバンバン使われるようになったのは18世紀からだそうで、ホイヘンスの時代ではまだ、幾何学者=数学者という認識だったそうです。ついでに哲学という言葉は、科学あるいは学問にあたる使われ方をしていたそうです。

小田急のロマンスカーカフェにて一服
(本当は新宿で途中下車してウロウロ…と思ってたのに、
無意識に乗換改札くぐってたのでエキナカでお茶しました、の図)

家に帰ってから『光についての論考』のテキストを自分でも読んでみたり、また去年から放送大学で勉強している物理の教科書(『自然科学はじめの一歩』と『初歩からの物理』)を見てみたり、高校の参考書『物理基礎』を見てみたり…としていますが、この科学史講座を受講したことで、今までモノクロームに見えていた教科書の中に、なんだか色が射してきたような心地がします。

講義の中で有賀先生も、教科書で学ぶときには分野ごとにまとめて学ぶから時間の経過が見えにくいけれど、コレとアレの間にはけっこうな長さの時間の経過があって、その中にさまざまな出来事があるのが科学史をやっていると見えてくる…といったような内容のことをおっしゃってました。

また、「古いテキストを読むと必ず予想してないことが書いてあり、ひとつ気になりだすとそこからどんどん研究したくなってくる」…と。「だから皆さんもぜひ、読書案内の本も読んでみてくださいね」と、この科学史講座は締めくくられました。

私は放送大学に入るときに、歴史を扱っている人間と文化のコースにするか、はたまた科学を扱っている自然と環境コースにするかでとても迷ったのですけれど、今回の科学史講座を受講して、歴史の中に科学があって科学の中に歴史があるのだな~と分かり、何も分けて考えることはないんだ~という気分になりました。それから、勉強方法としては遠回りっぽく見えるかもだけど、歴史を通して科学の勉強をした方が、自分にとっては理解しやすいし定着しやすそうだな~ってこともよく分かりました。それに何より、面白い!

というわけで、大変身になり目を開かせてもらえた科学史講座でした。有賀先生、ありがとうございました!

また機会がありましたら、ぜひお邪魔したいです(^^)/



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