F.H.バーネット『秘密の花園』(新潮文庫、2016年)


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と思いシェアしました。

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そうしましたところ、『秘密の花園』の物語も面白いですよ~というお声をいただきまして、さっそく本屋さんへ出かけ、新潮文庫版を買ってきました。畔柳和代さんの訳に、酒井駒子さんの装画のものです。

バーネットの小説は『小公子』『小公女』等が有名ですが、アニメーションの印象だけで実際にはどれも読んだことがなく、今回のこの『秘密の花園』が、私にとって初めてのバーネット作品でした。

『秘密の花園』は児童文学とも言われているだけあり、とっても読みやすく、登場人物はどれも魅力的で、期待以上のおもしろさでした。読みながら、早く読み進みたい気持ちと読み終わってしまうのがもったいないという気持ちが、いっぺんにわき起こってきました。

舞台はイギリス、ヨークシャーのムーアです。ムーアは荒野とも訳され、ここが舞台の物語というと、エミリー・ブロンテの『嵐が丘』が真っ先に思い浮かびます。はじめ、『秘密の花園』も孤児になってしまった小さな女の子がムーアにある奇妙な館に引き取られる場面から始まりますので、『嵐が丘』みたいなエキセントリックな物語だったらどーしよーσ(^_^; と半ば恐々だったのですが、取り越し苦労でした(笑)。

テーマは『嵐が丘』も『秘密の花園』も孤独と再生で同じような気がしますが、『嵐が丘』の再生がある種のカタストロフィーがもたらすものだとするならば、『秘密の花園』の再生は正反対というか、もっとポジティブ。(『秘密の花園』にもカタストロフィー的な場面は重要なシーンとしてあることにはありますが…)

何かにコミットすることにより変容が生じるのは共通していますが、その方向が『嵐が丘』はひたすら狂気と妄想へと向かうのに対し、『秘密の花園』は希望と現実への行動に向かうのが対照的です。

ブロンテの『嵐が丘』は1847年の出版で、『秘密の花園』は1911年なので、おそらくバーネットは『嵐が丘』も読んでいたことでしょう。『秘密の花園』のはじめの方に、ムーアのことを大嫌いと言う主人公メアリに対して、お世話係りのマーサは「そりゃなじみがないからです」と言い、ムーアの素晴らしさをたくさん並べたて、自分はムーアが好きで離れて暮らしたくなんかない、と答えます。

バーネットは、少なくとも私の中のムーアの印象を『嵐が丘』のそれから、すっかり変えてしまいました。

『秘密の花園』を読んで私の中のムーアの印象がすっかり変わったのと同じように、この物語に出てくる登場人物達は、自分の孤独と偏屈を徐々に明るく前向きで自信に満ちたものへと変化させていきます。そのきっかけとなるのは、マーサのように自分の価値観にそって、自分の周りにあるものを素直に大好きだと表現し、そのように行動する人たちの姿です。

『秘密の花園』は素朴な物語ですが、とてもパワフルで普遍的なメッセージを持つ、最高の一冊でした。



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